Project

NTTデータのエンゲージメント向上施策。社内メディア、イベント、NewsPicksを連動させてつくる世界観

株式会社NTTデータの法人コンサルティング&マーケティング事業本部では、社員のエンゲージメント向上のため、AlphaDrive/NewsPicksによる組織変革支援ソリューションを導入しています。

約3,500名の巨大な組織で、サイロ化を打破し、自律的なアクションを生み出している一大プロジェクト「Monthly Disruption」の全容を、NTTデータの楫(かじ)貴之様、木村香織様に聞きました。

※NewsPicks Enterprise:NewsPicksの法人向けプロダクトを指します

導入企業
NTTデータ
業種
システムインテグレーター
部署・職種
法人分野
主な活用目的
社内のエンゲージメント向上
使用サービス
組織変革支援ソリューション
NewsPicks Enterprise
楫 貴之

楫 貴之

法人コンサルティング&マーケティング事業本部 マーケティング室 企画担当 課長代理

木村 香織

木村 香織

法人コンサルティング&マーケティング事業本部 マーケティング室 企画担当主任

加藤 俊輔

加藤 俊輔

AlphaDrive/NewsPicks
企業変革SBU コーポレート・トランスフォーメーション事業部 組織変革ストラテジスト

導入の狙い

社員のエンゲージメント向上プロジェクト「Monthly Disruption」を強化し、組織を活性化させたい。

 

サマリー

  • 20代後半〜30代前半の社員のエンゲージメント低下を解決したい​​​​​​
  • 「Monthly Disruption」は、社内メディア・イベント・NewsPicks Enterpriseの3つの柱を連動させる総合的なエンゲージメント向上企画
  • ターゲットや目的を議論した上で、手法として「編集力」「メディア」を活用する
  • 継続的にプロジェクトを運用した結果、事業部の枠を越えて広く評価を得られた

事業を支える“中堅社員”のエンゲージメントに注目

 

NewsPicks加藤(以下、NP加藤):

NTTデータさんは、2019年に社内のエンゲージメント向上施策「Monthly Disruption」を構想し、今日まで運営されてきました。私たち AlphaDrive/NewsPicksでは、本プロジェクトの立ち上げから継続的に支援を行っています。まずは「Monthly Disruption」立ち上げの経緯から教えてください。

 

楫様:

発端はさらに前で、2017年頃です。約3,500名の社員が所属する法人分野で社員エンゲージメントの実態調査を行いました。IT業界の平均的なスコアに対しては総じて高い水準にあったものの、役職別に分析してみると細かなバラつきが見えてきました。我々が特に課題としたのは、20代後半から30代前半が多い主任・課長代理層。事業の中核を担う中堅社員のエンゲージメントがカクンと下がる動きを見せていたのです。

 

NP加藤:

はっきりと数字に表われたわけですね。

 

楫様:

さらに定性的な意見には「人材の育成方針や会社のビジョンが見えにくい。会社が良い方向へ変化していくという期待を持ちにくい」といったものも多く、組織の中で閉塞感を覚えている社員が一定数いることがわかりました。

 

木村様:

当時、私はシステムエンジニアとして現場で業務を行っていましたが、確かに「このまま同じ様な環境でシステムの設計〜リリースを繰り返していくのだろうか」といった閉塞感はあったように思います。

 

※木村様は2021年5月に法人コンサルティング&マーケティング事業本部へ異動

 

楫様:

しかし、本当は全然そうじゃないんですよ。中堅社員に対する会社の期待はとても大きいものがありますし、自由な挑戦を受け入れる準備や制度もあります。実際、社内を見渡してみると、のびのびと活躍している“スター社員”はたくさんいます。しかし弊社は事業部ごとに離れた拠点で仕事をする性質上、他の部署の取り組みや魅力的な人材に気付きにくい環境であることも事実です。

 

活躍している人がいるのに、知らないのはあまりにもったいない。その存在をしっかり伝えることで「NTTデータという会社は、こんなに挑戦できるフィールドなんだ!」と感じてもらえないか。それがこのプロジェクトの発端でした。

社内メディア、イベント、ニュースを組み合わせる総合プロジェクト

 

NP加藤:

楫さんは「スター社員が多い」とおっしゃっていましたが、私も同感です。ご支援する中で多くの社員の方と会話したのですが、個性豊かな方が本当に多いですよね。社員でありながらYouTuber活動を始めた方や、さまざまな企業でサステナビリティ推進室を立ち上げてきたESGスペシャリストなど。具体的なエピソードは到底ここでは話しきれませんが、皆さんNTTデータという大企業のアセットをフル活用し、思いを持って挑戦していることが印象的でした。

 

楫様:

社員のキャリアやスキルが多彩になっていることも関係していると思います。最初は、そのような方たちの魅力を記事にして、単発的に発信していければと思っていたのですが、組織のカルチャーとして変革を目指すなら、さまざまな施策と組み合わせて継続的に行っていく必要があると考えました。

 

そこで、次の3つの施策を組み合わせた企画を構想し、「Monthly Disruption」と名付けました。

 

①   社内メディア(社内報)での情報発信

②   四半期に一度の社内イベント開催

③   NewsPicks Enterpriseの日常的な活用

 

 

運営の座組みは、私が総合プロデューサーで、2021年から加わった木村はディレクターです。AlphaDrive/NewsPicksさんには伴走支援とともに、上記3つの施策それぞれで①社内メディア(社内報)の取材・編集、②イベント配信・運営のサポート、③法人向けサービスNewsPicks Enterpriseの提供をお願いしています。

 

出典:NTTデータ様の資料をもとに制作

社員の心に刺さる、企画のつくり方とは

NP加藤:

ここからは、3つの柱を順番に解説していただきます。まず、社内メディアの設計についてですが、NTTデータさんではプロジェクト名と同じ「Monthly Disruption」という社内メディアを立ち上げました。これは「社内報アワード2020 WEB/アプリ部門(※)」グランプリを獲得するなど、社内外で大きな評価を得ましたね。

 

※社内報アワード:ウィズワークス株式会社が主催する全国規模の社内報企画コンクール

 

楫様:

社内メディアで発信する記事は、社員の紹介や、各部署の活動報告がメインです。それ以外にも、私たちが独自に企画・制作する特集もあります。

 

木村様:

一つの例をご紹介しますと、「NTTデータの資源や環境を活用しながら挑戦するスター社員」にスポットを当てたシリーズ企画「大企業を使い倒せ!」は、特に反響が大きかったです。多くの社員が読んでくれて、内容もとても好評でした。

 

「大企業を使い倒せ!」企画のイメージ

楫様:

「使い倒す」という切り口も新鮮でよかったですね。少し強い言葉ですが、若手社員が既存のルールに囚われず大企業という舞台でやりたいことを切り拓く姿を描くことでDisruptiveな印象を持たせ、さらに環境を生かして新しいことを始める(=使い倒していく)という行動が新しいカルチャーとしてアリなんだと思ってもらうことができました。

 

社内報では既存の社内カルチャーの中で起こった出来事を記事にすることは多々ありますが、それでは「Monthly Disruption」でやる意味はありません。“よくある社内報”とは違った刺激を持たせることを、この企画では大切にしています。

 

NP加藤:

「Monthly Disruptionでやる意味」という視点は、企画検討の軸になっていますよね。

 

 楫様:

そうですね。企画会議では毎回10数案を持ち寄り、そこからディスカッションして決めます。社内メディアには活動報告など他にもたくさんの記事があるので、「Monthly Disruption」の特集ではNTTデータの事業と親和性の高い「ど真ん中」のテーマはあえて除外することが多いです。これまで培ったカルチャーを生かしながらも、創造的破壊を起こしていくためには、いい意味で「NTTデータらしくない」企画へ重心をずらしていく必要がありますね。

木村様:

その一方で、尖りすぎると受け入れてもらえなくなります。当社の社員は調和を優先するソフトなタイプが多いので、あまりにギラギラした記事は合わないみたいです。真ん中過ぎず、尖り過ぎずといったバランスは、すごく気にしています。

 

NP加藤:

私たちはどうしても「NewsPicksらしい」エッジを立たせる方向に企画を考えてしまいがちです。それは世の中に向けた「経済ニュースメディア」としては正解でも、社内メディアとしては過剰なケースもありますよね。発信したい内容と企画性を担保しつつ、社内の空気にマッチするようにチューニングすることが必要です。木村さんのような「社内ディレクター」は、自社メディア運用に欠かせない存在だと言えます。

「脱・勉強会」次のアクションを創出するイベント設計

NP加藤:

続いては、四半期に一度開催している「イベント」についてお聞きします。毎回、さまざまなゲスト講師を招き、オフライン/オンラインの両方で講演やディスカッションを行ってきました。

 

木村様:

企画の考え方は社内メディアと同じです。「毎日、このまま業務をこなしていくだけでよいのだろうか」と現状の業務や環境に不安を感じている社員が、刺激を受けてワクワクできる内容を届けたいと考えています。

 

楫様:

いくつかある中からポイントを上げるとすれば、「イベント」であり「勉強会」にしない仕立てを大切にしています。「勉強会」と銘打った場合、参加者は当然勉強することを目的に参加しますから、登壇者と参加者の関係性が自然と「先生と生徒」になってしまいます。しかし、目的はエンゲージメントの向上です。受講して終わるのではなく、刺激を受けて行動に移すまでを設計したい。またオフラインの場合なら、隣に座った人同士がつながって、新たなコラボレーションが起きることも期待できます。そのような設計が施された「イベント」の存在が必要です。

 

NP加藤:

私がイベントをサポートする際は、特に次の2点に気を付けています。1つは、ゲスト講師だけでなく、NTTデータさんの社員にも講演に登壇してもらうことです。社員の方がゲスト講師と同じ壇上に立ち、対等な関係性で対話することで、ゲストの知見と社員の皆さんの可能性が融合すると考えています。

 

もう1つは、ゲスト講師の講演内容に対して「NTTデータの場合はどうすべきか」という問いを立てることです。得られる知見や学びを「自分たちの業務」にまで落とすことで、参加後の行動につながると考えています。

オフラインイベントの様子

 

木村様:

イベント開催後は、毎回参加者にアンケートを取って振り返りを行います。そこで「他の社員とイベントの共有会をしたい」「みんなでイベントの感想を言い合いたい」など、参加者の次の行動につながるコメントがあると、とてもうれしいです。そういった機会を、運営としても設けていきたいと考えています。

 

一方、ただ「勉強になりました」というコメントはお褒めの言葉であると同時に、参加者が受け身になっている証拠でもあります。企画サイドとしては「勉強会」を脱却できていないということになりますので、反省材料として受け止めています。

 

NP加藤:

お二人の中で特に印象的だったイベントは何ですか?

 

楫様:

AlphaDrive CEOの麻生要一さんに「新規事業」のテーマで話していただいた回です。新規事業に取り組んでいる参加者が多く、皆さん相当刺激を受けたようでした。この回の参加者は、その後も定期的にイベントに参加する常連メンバーに育っています。

 

木村様:

元・日本マイクロソフトの澤円さんが登壇したイベントも好評でした。250人以上の参加登録があり、アンケート結果も非常によかったです。

 

NP加藤:

他にも、リンクトイン・ジャパン代表の村上臣さん、IT業界のトップランナーである及川卓也さん、世界的なデザイナーであるKESIKIの石川俊祐さんなど、さまざまな業界のスターが登壇してくださいました。

参加者の熱量をキープするNewsPicks Enterprise

 

NP加藤:

3つ目の施策がNewsPicksの活用です。参加者が共にニュースを学び、コミュニケーションをとることができるNewsPicksの法人版プロダクト「NewsPicks Enterprise」を導入しています。理由は何でしょうか。

 

楫様:

「NewsPicks」という経済ニュースメディアの世界観が、今回のターゲットである20代後半〜30代前半の世代にマッチしていたことが、一番の理由です。

 

「Monthly Disruption」のプロジェクトにおいて、NewsPicks Enterpriseは「参加者の熱量を保つ」役割を担っています。現在、運営と参加者が直接つながる機会は3カ月に一度のイベントだけで、どうしても期間が空いてしまいがちです。その間にNewsPicks Enterpriseによる学びの機会を提供することで、参加者のモチベーションをキープすることを狙いました。

 

NP加藤:

NewsPicks Enterpriseの利用は、社員全員ではなく「Monthly Disruption」の参加者の中から希望者に限定しています。ここも特徴的ですね。

 

楫様:

はい、現在は「Monthly Disruption」の思想に共感し、一緒にコラボレーションしていきたいという人を対象としています。この入口の設計も重要で、もし誰でも利用できるようにした場合、きっとNewsPicksの有料コンテンツだけを目当てに利用する方が一定数出てきてしまうでしょう。繰り返しになりますが、目的はエンゲージメントの醸成による組織の活性化です。ここでは受け身ではなく、自らも発信して新たに行動を起こしたいという人にNewsPicks Enterpriseの空間を有効活用してもらい、組織の中心的コミュニティに育て上げていくことが必要だと感じています。

 

AlphaDrive/NewsPicksのサービス資料はこちら

NewsPicksに求める「編集力」は、ニュースだけでない

 

NP加藤:

NTTデータさんは、社内メディアやイベントの実行支援にAlphaDrive/NewsPicksのコンサルティング力・編集力を、参加者へ向けた学習プロダクトとしてNewsPicks Enterpriseをと、目的に合わせて2種類のソリューションを活用されています。

 

私たちは、多くの企業の組織変革を支援していますが、中には「とりあえず記事をつくってほしい」というオーダーをいただくことも少なくありません。それ自体はメディアを評価いただいているということでありがたいのですが、根本にあるべき「誰に何を伝えたいか」という視点が抜け落ちてしまっているケースが多いのも事実です。

 

その点、NTTデータさんには明確なターゲットと狙いがあり、それを実現するための手段として、編集やプロダクトという手段を活用されています。本質的な課題解決を目指して柔軟な支援ができることは、私たちにとっても非常に喜ばしいことです。

継続的なプロジェクト運営で、社内の認知度が向上

NP加藤:

2019年に始動した「Monthly Disruption」は、長期プロジェクトに成長しました。どのように変化していますか?

 

楫様:

運用を続ける中で、ノウハウの蓄積とともにコンテンツも徐々に形を変えています。当初は社員にインタビューをしてみて、その結果を記事に落とし込んでいました。現在では四半期ごとに「テーマ」を定め、記事とイベントを連携させた総合的な取り組みに拡大しています。

 

具体的には、まずテーマに沿った活躍をしている社員にスポットライトを当てた記事を複数展開し、社内に一定の盛り上がりをつくります。次に記事を読んで高い共感をしてくれた社員を中心に、テーマを締めくくるようなイベントを開催。これにより、イベントをより有意義な時間にすることができるようになりました。

 

木村様:

施策の効果については、社内報記事のPVやリアクションボタンのクリック数、イベントの参加者数などを見ています。イベントの参加者数でいうと、毎回社内に告知をすれば100〜200名をコンスタントに集客できるようになっており、社内に企画のファンをつくることができていると実感しています。参加者からは「こんなイベントをやりたい」といった要望をいただくことも増えており、マインドの変化を肌で感じています。

 

また他分野の方に出演依頼した際には、もともと本プロジェクトの存在を知ってくださっていて、声がかかったことに喜んでくださることもありました。法人分野のプロジェクトではありますが、分野の垣根を越えて、全社に知られるようになってきているみたいです。

 

楫様:

うれしいことに、社内の他の事業部から「Monthly Disruption」のような企画を実行するノウハウを教えてほしいという要望をいただくことも珍しくなくなりました。プロジェクトの産みの親としては、「秘伝のタレ」は隠しておきたいという気持ちもあるのですが、しっかりとオープンにしていくことで、法人分野に限らず会社全体に良い影響を与えられるとうれしいですね。

 

 

「社員自らの意志で動く」ことが組織変革の鍵

 

NP加藤:

最後に、支援を担当している私の感想ですが、NTTデータさんは「Monthly Disruption」を自分たちの強い意志で実行されていますよね。運営業務は大変だと思いますが、コアとなる部分を丸投げせずに自分たちで実行していることが、成功の要因になっていると感じています。

 

楫様:

社員が社員のために、当事者意識を持って取り組むことが最も大切だと思っています。プロデューサーとディレクターという企画の主軸を、あくまで自社側に置き続けるのもそのためです。語弊を恐れずに言うと、私たちが「AlphaDrive/NewsPicksさんがいなければこのプロジェクトは成り立たない」と考えているなら、成功しないと思っています。自社メンバーによる運営と、加藤さんの伴走支援という関係性は、今後も保っていきたいです。

 

NP加藤:

私たちAlphaDrive/NewsPicksは、企業風土を変えたり、社員の自律性を高めたりするソリューションを提供する使命を負っていますが、あくまでサポート役。主役として活動するのは運営のお二人であり、NTTデータの社員の皆さんです。今後もぜひ「Monthly Disruption」のために何をすべきか、本質的な議論と支援をできると嬉しいです。

 

プロジェクト担当者:加藤俊輔

執筆:牧浦豊

構成:大久保敬太

写真:赤松洋太